Use Case
導入事例
「野良AI」を一掃し、組織全体で安全に使える環境へ|大阪商工会議所が実現した生成AI活用の全組織展開

【導入事例】大阪商工会議所
大阪商工会議所は、大阪市内の約3万の企業・団体で構成される地域総合経済団体です。産業振興や経営支援、政策提言を軸に、中小企業の成長支援や地域活性化事業を幅広く展開しています。
組織内のIT管理・情報セキュリティを担う経営情報センターでは、早くから生成AIの業務活用に取り組んできた一方で、いくつかの課題を抱えていました。そこで取引のある企業から紹介され導入したのがナレフルチャットです。現在では200名強にアカウントを配布し、アイデア出しや議事録作成をはじめ、幅広い業務で活用が進んでいます。今回は導入を主導した古川さま・橋本さまに、導入の背景や効果、今後の展望について伺いました。
■導入団体と生成AIの利用状況
── はじめに大阪商工会議所の事業内容について簡単に教えてください。また、主な担当業務について教えてください。
橋本さま:
私たち大阪商工会議所は、大阪市内の約3万の企業・団体で構成される地域総合経済団体です。主に大阪の産業振興、経営支援、政策提言を行い、中小企業の成長支援や商談会、地域活性化事業など幅広く展開しています。
その中で私たち経営情報センターの所内情報化担当では、内部管理部門として所内のパソコン・業務用システム・SaaSなどITツールの管理運用および個人情報保護活動や情報セキュリティを担当しています。
古川さま:
経営情報センターには職員が8名おりますが、職員だけでは人員が足らず、派遣職員や協力企業の方々にも常駐いただき、日々の業務を助けていただいています。
経営情報センター内には2つの担当があります。1つは「経営情報担当」で、地域の中小企業向けIT支援を具体的に行う部署です。企業間マッチングをネットで行う「ザ・ビジネスモール」の運営や、中小企業向けに「サイバーセキュリティお助け隊サービス」のサイバー攻撃対策支援など手がけています。もう1つが私たちの「所内情報化担当」で、所内約400台のパソコンの運用管理や、全体で使用する各種業務システムの管理・導入支援を行っています。
── ナレフルチャット導入前、生成AIの業務活用は行っていましたか?また、その際の課題やお悩みを教えてください。
橋本さま:
2023年8月頃に生成AIサービスの利用ガイドラインを策定し、その範囲内で限定的に生成AIの利用を認めていました。しかし運用していく中で、大きく2つの課題を感じていました。1つは、業務上の機微な情報を入力できないことによる不便さです。もう1つは、所内全体での活用状況が把握できないことです。活用状況が見えないと、他部署での事例が収集できず、問題への対応が後手に回ってしまうことがありました。またセキュリティ事故が報告される中で、「うちは本当に大丈夫なのか」と問われた際に、根拠を持って答えられる状態にしておく必要性も感じていました。
古川さま:
ChatGPTやGeminiなどのクラウドで提供される生成AIサービスを各自で登録している状況では、活用状況は自己申告に頼るしかなく、数字で把握することができませんでした。また、ルールで機微な情報の入力を禁じていても、実際に守られているかどうかは確認できません。便利だからこそ、知らないうちに不適切な使い方をしてしまう「野良AI」のリスクは、常に頭の片隅にありました。これらを解決できるサービスがあればいいのに、と思っていたところでした。
■ナレフルチャット導入の背景

── ナレフルチャットを知ったきっかけと、数ある生成AIツールの中からナレフルチャットを選んだ理由や決め手を教えてください。
橋本さま:
株式会社ハイパー(ナレフルチャット販売代理店)からご紹介いただいたのがきっかけです。内容を聞いた瞬間、導入前に抱えていた課題がそのまま解決できると感じ、とにかく使ってみなければわからない、と試験導入することにしました。
決め手は主に5点です。まず、利用料がユーザー数ではなく組織単位の課金体系であるため、全職員への展開がしやすかった点。次に、複数の生成AIエンジンを利用できるため、すでに特定のエンジンに慣れている職員にも抵抗なく浸透させられると感じた点。また、入力情報はナレフルチャット側で厳格に管理され、かつ生成AIエンジンに学習されないため、業務上の機微な情報も安心して入力できる点。そして、RAG機能によって内規などを読み込ませ、内部向けのチャットボットのように活用できる環境が作れることができること、さらにプロンプト生成機能によって生成AI初心者でも使いこなせる環境が整っている点です。試験導入しているうちに「これなら当所の課題をまとめて解決できる」と確信し、正式導入を決めました。
── ナレフルチャットを全職員に提供していますか?また、所内でのナレフルチャットの利用者数を教えてください。
古川さま:
当所には正職員・嘱託職員・派遣職員と多様な雇用形態があるため、全員への一律提供は難しい面もありますが、基本的には直接雇用としている職員全員にアカウントを配布し、部署からの要望に応じて派遣職員や業務委託者にも追加提供もしています。現在はアカウント数が200名強で、そのうち実際に利用しているのは120名ほどです。
特に印象的だったのは試験導入時のことです。全所的にナレフルチャットを試験導入した旨のインフォメーション(所内掲示板)に流したものの、実際にはすぐには利用されないだろうと考えていたのですが、想定をはるかに超える勢いで利用され、あっという間に準備していたクレジット(事前課金)がなくなってしまいました。「これほど知らない間に何かしらの生成AIサービスを使われていたのか」と実感した瞬間でもあり、同時に、潜在的なニーズがいかに大きかったかを感じました。
── 従業員への浸透に向けて、工夫されたことはありますか?
橋本さま:
若手職員がグループウェア上で活用事例を自発的に共有したり、勉強会を開催したりと、現場発の動きを大切にしながら環境づくりを進めてきました。「このプロンプトを使うと意味のない「あー」「えー」といったフィラーを除いて綺麗に文字起こしできる」といった情報が上司からではなく現場から広がっていく姿は、組織として同じツールを契約しているからこそ生まれるものだと感じています。誰かが発見したノウハウを、全員が同じ画面で即座に試せる環境が、自然な浸透を後押ししてくれました。
ベテラン層には、補助金の公募要領をRAG機能で読み込んでチャットボット的に活用するなど、実務に直結した使い方を具体的に示すことで、「とりあえずやってみよう」と思ってもらえるきっかけを作りました。
古川さま:
浸透を加速させた大きな要因の一つが、「機微な情報を入力してもよい」と明示できたことです。経営指導で預かった企業情報のように、通常の生成AIではタブー視される情報でも、ナレフルチャットであれば利用規約を確認した上で「使ってください」と言えました。
さらに、管理者である私たちでもどのような使い方でどれだけ使われているのか、統計的な情報は把握できるものの、個々の詳細な入力内容は閲覧できない仕様になっています。「見られているかもしれない」という心理的なハードルがなくなることで、職員が安心して使えるようになりました。「できないこと」が、むしろ安心して使ってもらえる理由になっているのは、意外な発見でした。
── ナレフルチャットの具体的な活用方法を教えてください。また、従業員の間で特に人気の使い方やプロンプトがあれば教えてください。
橋本さま:
時間削減に最も貢献しているのは会議の議事録作成です。議事録を簡潔に読みやすく整える文字起こしのプロンプトは、若手が社内ポータルで共有してくれたことで瞬く間に広がりました。海外からの問い合わせの要約や、補助金制度・行政文書など複雑な文書の要約も、様々な部署で日常的に活用されています。
古川さま:
補助金の公募要領をRAGで読み込み、チャットボット的に情報検索する活用事例でしょうか。経営指導員のチーム内でノウハウが共有され、経営支援の現場で積極的に活用されています。経営相談にも生成AIを活用できるのは、ナレフルチャットならではの強みだと感じています。
■ナレフルチャット導入後の効果
── ナレフルチャットの導入効果を教えてください。
橋本さま:
最も効果を実感しているのは、会議の議事録作成にかかる時間の削減です。以前は会議後の議事録作成で残業が発生していましたが、それがなくなりました。コスト削減や残業代の抑制にもつながり、働き方改革の観点でも着実な効果が出ています。
古川さま:
具体的な数値での計測はしていませんが、議事メモがすぐに出てくるようになったことで、生産性は明らかに向上していると感じています。最初の文字起こしや叩き台作成の工数が削減できるだけでも、現場の負担は大きく変わります。また、活用状況を管理画面で数字として把握できるようになったことも、大きな効果の一つです。以前は自己申告に頼るしかなかった活用状況が、ユーザー数やチャット件数として可視化されることで、経営層への報告にも説得力が生まれました。
── ナレフルチャット導入を通じて、従業員の生成AIに対する意識や使い方に変化を感じていますか?
橋本さま:
この半年ほどで、ベテラン層にも明らかな変化が出てきています。周りが使っているのを見て「とりあえず使ってみたい」と言ってくれる方が増え、新たにアカウント作成を申し出る方や、一度使わなくなっていた方が再び使い始めるケースも出てきています。若手からベテランまで、幅広い層が自然と使うようになっていったことは、素直に嬉しい変化でした。
古川さま:
導入前に最も懸念していたのが「野良AI」の問題でした。ルールで縛っていても、外部サービスに機微な情報が入力されているかどうかは確認できません。ナレフルチャットを導入したことで、使い勝手の良いツールが社内に用意され、職員が自然とそちらを使うようになりました。「便利だからナレフルチャットを使う」という状態になれば、セキュリティリスクも自然と下がっていきます。管理側が強制するのではなく、使いたくなる環境を作ることが、結果として安全な運用につながると実感しています。
■今後の展望
── 組織のビジョンの中で、生成AIを活用して実現したいことはありますか?
古川さま:
生成AIを活用した業務改善と生産性向上は、今期の目標にも掲げている取り組みです。「AIを使わないことが時代遅れ」になりつつある今、職員一人ひとりが身近にAIを感じながら事業に取り組める環境を整えていきたいと考えています。
── 最後に、生成AIを活用する重要性について感じていることや、生成AI導入を検討している企業へ向けて、アドバイスやメッセージがあればお願いします。
橋本さま:
法人として生成AIを活用する上で重要なのは、「生産性向上」と「セキュリティ」の2点をセットで考えることだと思います。生産性の観点では、特定の個人だけでなく組織全体で使えるようにすることが重要です。個人が各自のツールを使うだけでは、ノウハウは属人化したままで組織としての効果は限定的です。一方でセキュリティの観点では、取引先から預かった情報や機微なデータを適切なツールで扱うことが管理者としての責任です。
ナレフルチャットは、この2つの課題を同時に解決してくれるツールでした。組織全体で同じツールを使うことでノウハウが自然と共有される環境が整う。生成AI導入を検討している企業には、まず「全員が安心して使える環境」を整えることから始めることをお勧めしたいです。
本事例の導入支援協力:ナレフルチャット販売代理店「株式会社ハイパー」




