PLUS
生成AIコラム
うさぎでもわかる!Jev入門 文章を書かない「意思決定特化AI」System One Modelとは

はじめに
LLMに分類をさせて、返ってきた文章をパースして、形式が崩れていたらリトライする。そんな処理を書いたことがある方も多いのではないでしょうか。
2026年9月15日、この手間をまるごと無くすAIが登場しました。TypeSafe AIの「Jev(ジェヴ)」です。
先に結論をお伝えします。
- Jevは文章を一切生成しないAIです。決められた選択肢の中から答えを選び、確率と一緒に返します
- 応答は70〜500ミリ秒、出力トークンは無料です
- 10月6日にはOpenAIも同じ発想の「Decisions API」を公開し、新しいカテゴリとして動き始めています
この記事の後半では、Jevを使ってXのタイムラインをリアルタイムに仕分けるChrome拡張を作った結果も紹介します。それでは、ひとつずつ見ていきましょう🐰
生成AIの社内利用をお考えの企業様へ
ナレフルチャットは初心者でも使いやすい設計で、組織全体への生成AI浸透を支援するツールです。プロンプト自動生成機能や社内共有機能により、AIリテラシーに差があっても全員が活用できます。企業のAI導入を検討している方は、こちらをご覧ください。
Jevとは何か
まずは、Jevが何のために作られたのかを押さえておきましょう。
Jevを公開したTypeSafe AIの創業者Diogo Almeida氏は、OpenAIでChatGPTの土台となる研究に携わった人物です。公式ブログは、こんな問いかけから始まります。
“models have been superhuman at chat for years, so where is all the automation?”
(AIはチャットではとっくに人間を超えているのに、自動化はどこへ行ったのか)
答えとして作られたのが、ソフトウェアの中の「小さな判断」を高速に肩代わりするJevです。名前は経済学者ジェヴォンズに由来し、知能が安くなるほど使い道は桁違いに増える、という考えが込められています。
注目度も高く、公開から1週間で関連するGitHubリポジトリが1,865件作られ、合計43,750スターを集めました(arXiv論文「Jev in the Wild」調べ)。
では、LLMと何がそんなに違うのでしょうか。
LLMとの違い
「何を渡すと何が返ってくるのか」で比べると、違いがはっきり見えてきます。
出力の形がまったく違う

出典 Introducing System One Models & Jev – TypeSafe AI Blog
LLMは文章を1トークンずつ順番に生成し、使う側で解析と検証が必要です。Jevは答えの形を先に決めておき、すべての答えを1回の処理で並列に返します。どの答えにも確率と確信度が付きます。
表の中で特に注目したいのは、次の3行です。
- 速度 フロンティアLLMの応答が3〜329秒なのに対し、Jevは70〜500ミリ秒です
- コスト LLMは出力トークンが入力の約5倍高いのに対し、Jevは出力が無料です
- 確信度 LLMは過信しがちですが、Jevは確信度が高いほど正解率も高くなるよう学習されています
これを支えるのが独自の学習方法「RLCD(Reinforcement Learning for Calibrated Decisions)」で、確率が実際の正解率とずれないことを目標にしています。
TypeSafeはこの種類のモデルを「System One Model」と呼んでいます。カーネマンの「ファスト&スロー」でいう、速く直感的な思考(System 1)にちなんだ名前です。じっくり考えて文章や計画を書くのはLLM、ワークフローの途中で一瞬の判断を下すのはJev、という役割分担のイメージです。
うさぎも最初は「LLMを小さく速くしたもの」だと思っていましたが、実は出力の形そのものが違う、まったく別のカテゴリのモデルでした。
質問は3種類だけ
Jevへの質問は、次の3つの型のどれかで書きます。

出典 System One – TypeSafe AI Docs
複数の質問を1回でまとめて聞けるのもポイントです。公式ドキュメントでは、「Stripe連携が3日間失敗していて売上を失っている、急いで助けて」という問い合わせに、次の3つを同時に聞いています。
- department どのチームが対応すべきか(Choice。請求 / 技術 / 営業から選ぶ)
- frustration 顧客の不満度(Score。0 冷静、1 不満あり、2 激怒 の3段階)
- is_urgent 急ぎの要件か(Noul)
返ってきた答えは次のとおりです(抜粋)。
{
"model": "jev-1.13.0",
"answers": {
"department": { "choice": "technical", "confidence": 0.78,
"probabilities": { "technical": 0.85, "billing": 0.15, "sales": 0.0 } },
"frustration": { "score": 1.0, "confidence": 1.0 },
"is_urgent": { "noul": 1.0 }
}
}
読み方は次のとおりです。
- department 技術チーム(technical)が85%で最有力です。請求チームも15%あるため、確信度は0.78とやや控えめです
- frustration スコア1.0は3段階の真ん中「不満あり」にあたります。確信度1.0で迷いはありません
- is_urgent 1.0なので、ほぼ確実に「急ぎ」と判断しています
つまりプログラム側は「技術チームのキューに入れ、急ぎフラグを立てる」とそのまま処理できます。確信度が低い答えだけ人に回す分岐も、if 文1つで書けます。
出典 Quick start – TypeSafe AI Docs
「ハルシネーションしない」の正しい意味
公式は「ハルシネーションしない」とうたっていますが、これは選択肢の外の答えを返さないという意味です。選択肢の中から間違いを選ぶことはあるので、確信度が低いときは人のレビューに回す設計にしておくと安心です。
なお、主な学習言語は英語です。日本語も扱えますが、公式は自分のデータで事前に試すことを推奨しています。
速さと安さ、そして広がる選択肢
数字と周辺の動きから、Jevが注目される理由を見ていきます。
Jevの速さと料金
TypeSafeが公表している主な数字です。
| 項目 | Jev |
|---|---|
| 応答時間 | 70〜500ミリ秒 |
| 料金 | 入力100万トークンあたり0.042ドル、出力は無料 |
| フロンティアLLMとの比較 | 193.6倍速く、444.6倍安い(自社のワークフロー評価) |
最後の数字は、TypeSafeが作った4つのワークフローを各モデルに実行させ、GPT-6 AstraとFable 5.1の平均を基準の答えとして比べた結果です。公式ブログも「実際の効果としては高めの数字」と説明しているので、自分の業務で確かめるのがおすすめです。
出典 TypeSafe AI 公式サイト / Introducing System One Models & Jev – TypeSafe AI Blog
OpenAIのDecisions API
Jevの登場から約3週間で、OpenAIも同じ発想のAPIを出してきました。9月29日のDevDay 2026で一部の開発者向けに発表され、10月6日にパブリックベータとして全開発者に公開されています。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エンドポイント | POST /v1/decisions(専用) |
| モデル | gpt-6-luna のみ |
| 入力 | テキスト、または画像とテキスト |
| 速度 | Responses API経由より約10倍高速(OpenAI発表) |
| 正式版 | 今後数週間で予定 |
3種類の質問はJevとほぼ対応していて、predicateがNoul、choiceがChoice、scoreがScoreにあたります。リクエストもJevとよく似た形です。
curl https://api.openai.com/v1/decisions \
-H "Authorization: Bearer $OPENAI_API_KEY" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"model": "gpt-6-luna",
"input": "I was charged twice for my order.",
"questions": [{
"type": "choice",
"name": "department",
"instructions": "Which department should handle this complaint?",
"choices": [
{"value": "billing", "description": "Payments, invoices, and refunds."},
{"value": "technical", "description": "Problems using the product."},
{"value": "shipping", "description": "Delivery and tracking."},
{"value": "other", "description": "Requests outside these categories."}
]
}]
}'
公式ガイドの例では、この二重請求の問い合わせに対して billing が確率0.95、確信度0.93で返ってきます。
出典 Decisions – OpenAI API(「Select from fixed options」のリクエスト例とレスポンス例)
いちばんの特徴は画像を判断材料にできることです。公式ガイドには、商品写真に「へこみがあるか」をpredicateで判定するデモがあります。

出典 Decisions – OpenAI API(ガイド内のアニメーションの1コマ)
使うときの注意点も押さえておきましょう。
- 画像はBase64で直接埋め込む必要があり、
https://の画像URLは使えません - 選択肢には
otherのような受け皿を用意し、人のレビューに回すのが推奨されています - 確率のしきい値は、自社のラベル付きデータで決めるよう案内されています
セルフホスト型の「Jeff」
自前のサーバーで動かしたい方には、オープンソースの「Jeff」があります。JevのAPIと同じ形で動くセルフホスト型の実装で、4億パラメータの「GLiFormer」というモデルで動作します。
いちばんの魅力は、Jev向けに書いたコードがそのまま動くことです。READMEによると、起動は次のコマンドだけです(Python 3.12とuvが必要)。
uv sync --extra dev
uv run hf download knowledgator/gliformer-large-v1 --local-dir models/gliformer-large-v1
JEFF_API_KEYS=devkey uv run jeff
http://localhost:8000 で起動したら、公式のPython SDKの接続先を環境変数で切り替えるだけです。
export TYPESAFE_API_KEY=devkey
export TYPESAFE_BASE_URL=http://localhost:8000
手元ではGPU、MacのMPS、CPUの順に自動で選ばれ、クラウドのModalにもデプロイできます。
一方で、READMEには「自前で動かすほうが安いが、推論が必要なタスクではJevより精度が下がる」と明記されています。まずはJevで精度を確かめ、大量処理のコストが気になってきたらJeffを検討する、という順番がおすすめです。
3つをざっくり比べると
ここまでの3つを、基本的な違いで並べてみます。
| Jev | Decisions API | Jeff | |
|---|---|---|---|
| 提供元 | TypeSafe AI | OpenAI | オープンソース |
| 提供形態 | API(早期アクセス) | API(パブリックベータ) | セルフホスト |
| 入力 | テキスト | テキストと画像 | テキスト |
| 質問の種類 | Choice / Score / Noul | predicate / choice / score | Choice / Score / Noul |
| 料金 | 入力100万トークン0.042ドル | 入力100万トークン0.10ドル | 自前のサーバー代 |
使い分けの目安は次のとおりです。
- テキストの判断を速く安く回したいならJev
- 画像も判断材料にしたいならDecisions API
- 自前の環境で安く動かしたいならJeff
法人向け生成AIサービス「ナレフルチャット」では、テキストや画像の内容を正しく理解したAIが、高精度な対話を実現します。
また、ChatGPT、Gemini、Claudeなどの主要モデルを用途に合わせて使い分けることも可能です。応答速度、コスト、回答精度といった様々な観点からモデルを選ぶことで、最適なAI活用を実現します。
また、料金プランは企業単位の定額制を採用しており、何人で利用しても追加のコストは発生しないため、コスト管理の手間がかからないスムーズな全社導入を実現できます。
すべての機能が利用できるトライアル期間も用意しておりますので、生成AIの利活用を検討している企業様は、是非一度導入をご検討ください。
【使ってみた】Chrome拡張でXのタイムラインを仕分けてみる
Jevの速さを試すなら、スクロールのたびに判断が必要な場面がぴったりです。そこで、Xに流れてくる投稿を、Jevがリアルタイムに「カテゴリ」と「読む価値」で仕分けるChrome拡張「Jev Lens」を作ってみました🐰
Jev Lensの仕組み

拡張を有効にすると、Xを開いたときやスクロールしたときに、画面に表示された投稿を自動で分類します。使うモデルは jev-latest です。
投稿の本文をJevに送り、投稿ごとに次の2つを聞いています。
- カテゴリ(Choice) エンタメ、日常、ニュース、技術・AI、仕事・学び、宣伝・広告、その他の7つから1つを選ぶ
- 読む価値(Score) 自分の関心にどれだけ合うかを★1〜★5の5段階で評価する
分類の基準は自分で決められる
設定画面では、カテゴリ名と「分類基準(Jevへの指示)」を自由に編集できます(最大12カテゴリ)。

Jev Lensの設定画面(読む価値とカテゴリの設定)
読む価値の基準には、「新しい知識、具体的な発見、実践に役立つ情報を読みたい。中身のない宣伝や文脈のない断片の優先度は低い」と書いておきました。この関心の文章と投稿の本文から評価するしくみで、投稿者の評価や真偽の判定ではない点も画面に明記しています。

カテゴリごとの分類基準
ポイントは、迷いそうな境界を言葉で書いておくことです。たとえば宣伝・広告には「製品への単なる言及は含めない」「実際の有料広告であるかは断定しない」と書いています。公式ドキュメントでも、Jevは書かれた指示を文字どおりに読むため、条件や境界のケースは具体的に書くよう推奨されています。
タイムラインで動かしてみた
まずは拡張を有効にする前のタイムラインです。

分類前のタイムライン
有効にしてスクロールすると、投稿の下にカテゴリと読む価値のバッジが付いていきます。

分類後のタイムライン(右下は分類状況のパネル)

スクロールを続けた後の画面
| 投稿の内容 | カテゴリ | 読む価値 |
|---|---|---|
| 大谷選手のヒット速報 | エンタメ(99%) | ★2 |
| 家庭用ロボット工場の稼働ニュース | 技術・AI(100%) | ★3 |
| ロボットアームをWindowsで動かすガイドの紹介 | 技術・AI(100%) | ★3 |
カテゴリはどれも99〜100%と迷いがなく、読む価値は関心に書いた「実践に役立つ情報」に近い技術系の投稿のほうが高くなりました。
速さも十分です。画面に入った2件をまとめて分類したときのAPI往復は225ミリ秒、1件のときは169ミリ秒でした。スクロールに合わせてバッジがすっと付いていき、待たされる感覚はほとんどありません。思わず二度見したうさ🐰
作ってみて分かった注意点
- 本文は外部に送られます
パネルにも「本文をTypeSafeへ送信して分類します」と表示しています。社外秘の情報が流れるアカウントでは使わないようにしてください - APIキーが必要です
JevのAPIは公式コンソールで発行したキーで呼び出します。 - もし分類が止まったら
利用上限を超えるとAPIは「429 Too Many Requests」を返します。公式ドキュメントにも、需要が大きく上限が変わることがあると書かれているので、少し時間をおいて再開してください
出典 Jev 1.13 jaggedness – TypeSafe AI Docs / Models – TypeSafe AI Docs
まとめ
Jevは「文章を書かないAI」という新しい道具です。
- 得意なのは、振り分け、分類、段階評価、エージェントの行動判定のような、大量に発生する小さな判断です
- 文章生成や会話、計算や日付の比較は、LLMやコードに任せるのが向いています
- Decisions APIやJeffも加わり、このカテゴリはこれから一気に広がりそうです
「LLMに聞いて文章をパースする」処理を書いている方は、Jevへの置き換えをぜひ試してみてください。うさぎとしては、AIエージェントが「次に何をするか」を決める部品として定番になっていく予感がしているうさ🐰
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
あなたも生成AIの活用、始めてみませんか?
生成AIを使った業務効率化を、今すぐ始めるなら
「ユーザ数無制限」の法人向け生成AIサービスのナレフルチャット!
ChatGPT・Gemini・Claudeなどの主要AIモデルが使えて、
RAGやAIエージェント、スライド生成など全てナレフルチャットにお任せ!
生成AIの利用方法を学べる「公式動画」や、「プロンプトの自動生成機能」を
使えば知識ゼロの状態からでも、スムーズに生成AIの活用を始められます。

taku_sid
https://x.com/taku_sid
AIエージェントマネジメント事務所「r488it」を創立し、うさぎエージェントをはじめとする新世代のタレントマネジメント事業を展開。AI技術とクリエイティブ表現の新たな可能性を探求しながら、次世代のエンターテインメント産業の構築に取り組んでいます。
ブログでは一つのテーマから多角的な視点を展開し、読者に新しい発見と気づきを提供するアプローチで、テックブログやコンテンツ制作に取り組んでいます。「知りたい」という人間の本能的な衝動を大切にし、技術の進歩を身近で親しみやすいものとして伝えることをミッションとしています。



